天正四四八年 長月玖日
暑さ未だ残る中、本願寺一行は急報に揺れていた。僧長青木が織田軍との戦にて身体を痛め、戦闘続行が不可能となったのだ。
此れに動揺した一行は毛利軍との決戦にて老師石川を見殺しにする惨事。此れには信徒も何度目であるかと嘆く他無かったのである。
あれよあれよと始まった毛利との第二戦に於いても、薙刀使い山中が意気揚々挑むものの第三戦線にて大爆発、討ち死にとの報が入る。
更にはこの爆発に巻き込まれ、長きに亘る療養より復帰していた扇の要中村が散ったとのこと。其れ迄何とか戦闘を継続していた攻撃陣、此れに肩を落とすのみ。
最早此れ迄と云うのか。最早瞳に希望を映す者は誰も居なかった。
――否。我が導くのだ。燦然と輝く光に一行は目を細める。導きの青い星が、其処には君臨していたのである。
第五戦線こそ毛利軍の囮作戦にて手傷を負うも、第三戦線より蝦夷の司令塔西田と共に此の苦境を乗り越える。
素晴らしい働きぞ。誰もが言う中、然し風神風張が敵軍の砲撃に散る。――すると敵軍先鋒、公家野村が云うではないか。
銃を捨て、槍を捨てよ。最早戦いは終わったのだ。吠えるは三散華山田であった。否、終わってなどいない。
僧長青木が、扇の要中村が傷つき倒れる中、諦めていられない者たちが居た。なればこそ壱の陣羽織を背負う者が、諦めてはならぬのだ。